昨日、NHKラジオ第1「音楽の泉」でロストロポーヴィチ、リヒテルによるベートーヴェン、チェロ・ソナタ、Op.69、Op.102-2を取り上げた。ロシアの名手たちによるベートーヴェン、チェロ・ソナタ全集を聴いていこう。
チェロによる作品ではバッハ、無伴奏チェロ組曲、チェロ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)とクラヴィーアのための3曲のソナタが有名である。ハイドンもエステルハーツィ侯爵家楽長時代、オーケストラの首席チェリスト、名手アントン・クラフトのためにチェロ協奏曲を作曲している。ベートーヴェンが本格的なチェロのための作品を残したことは、ロマン主義の作曲家たちを始め、多くの作曲家たちに影響を与えたことは確かだろう。また、ベートーヴェンの時代、ベルンハルト・ハインリッヒ・ロンベルク(1767-1841)、ジャン・ピエール(1741-1818)、ジャン・ルイ(1749-1819)・デュポール兄弟、ヨーゼフ・リンケ(1783-1837)が近代的なチェロ奏法、合理的なメトードを確立した。そうした土壌あって、本格的なチェロの作品を生み出すことにもなった。
Op.5の2つのチェロ・ソナタは、プラハ、ベルリン旅行の際、デュポール兄弟との出会いから生まれ、プロイセン宮廷での演奏会の際、兄ジャン・ピエール・デュポールとともに初演した。ベルリンではプロイセン国王、フリードリッヒ・ヴィルヘルム2世(在位1786-1797)もデュポールにチェロを師事、優れた演奏家とあった。
Op.5-1。第1楽章。アダージョの序奏はたっぷりと歌われる。主部アレグロはチェロ、ピアノが緊密にやり取りを交わしていく。ロストロポーヴィチ、リヒテルが一体となって、若きベートーヴェンの闊達さを引きだしている。第2楽章。ここでも若きベートーヴェンのエネルギーが伝わって来る。
Op.5-2。第1楽章。アダージョの重々しい序奏がじっくり歌われていく。主部アレグロの激しい、精力的な動きも素晴らしい高揚感を見せる。音楽的にも充実している。第2楽章。ト長調の明るく、精力的なロンド。ロストロポーヴィチ、リヒテルの素晴らしい音楽づくりが光る。
Op.69。ベートーヴェン円熟期の名作で、この時期秘書役を務め、素晴らしいチェリストだったイグナッツ・フォン・グライヒェンシュタイン男爵に献呈した。ベートーヴェンは、貴族であっても何人かは人間らしい血の通った付き合いを続けた。ブルンスヴィック伯爵家、ニコラウス・フォン・ズメスカル男爵はその代表格だろう。グライヒェンシュタイン男爵もその1人といえよう。
第1楽章。ロストロポーヴィチがじっくり第1主題を歌いあげると、リヒテルが素晴らしい演奏で応じ、スケールの大きな世界を繰り広げていく。第2楽章。スケルツォでの主部、2つのトリオとの対比、名手たちが一体となっている。第3楽章。序奏部はじっくり、深みを帯びて歌われていく。主部。スケールの大きな世界が広がっていく。ロストロポーヴィチ、リヒテルの素晴らしいアンサンブルが聴きものである。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集にはダヴィド・オイストラッフ、レフ・オボーリンによる名演もある。ロシアの名手たちのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ演奏は避けて通れないだろう。
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