助川敏弥 追悼コンサート

 日本を代表する作曲家の一人、日本音楽舞踊会議代表理事、機関誌「音楽の世界」編集長を務め、2015年9月26日、肺ガンのため85歳で亡くなった助川敏弥の作曲家としての業績をたどった追悼コンサートが行われた。(20日 すみだトリフォニー小ホール)

 まず、邦楽、筝曲2曲。3つの十七絃筝による作品「形象」。3つの筝が互いに調和しつつ、一つの世界を作り上げていく。砂崎知子、野口悦子、高畠一郎が素晴らしい合奏を見せた。「葛の葉」は澄み渡った境地が聴こえてきた。佐薙のり子が車いす姿で出てきたとはいえ、しみじみとした味わいを醸し出した。

 歌曲。江川きぬによる「土と草」、「みそはぎ」、「永遠のみどり」は聴くに堪えなかった。江川の声の衰えが顕著で、歌曲としての体をなしていなかった。中村貴代による「ゆりかご ゆれる」、「のんびり のんびり かたつむり」、「春だ 春だ 春だ」、「真珠のようにかがやいて」はしっかりと歌われ、素晴らしい情感が漂ってきた。笠原たかによる「草原」、「木」、「星とたんぽぽ」は金子みすずの詩の情感を伝えていた。佐藤光政による「ゆうやみに」、「ゆらゆらと」、「すずしさを」、「あかつきを」、「ひさびさに」は佐藤が詩を朗読後歌うという形を取った。歌の情感が伝わる名唱だった。

 ピアノ作品。北川暁子による「桜まじ」、「夜の歌」、「KOMORIUTA」は透徹した響きが聴きものだった。広瀬美紀子による「友禅」もピアノの響きを生かした名品である。戸引小夜子による「山水図」は助川作品の代表作で、音の響きの中に水墨画が浮かんでくるような演奏だった。深澤亮子によるソナチネ「青の詩」も代表作。この作品を初演した深澤の自信に溢れた演奏だった。

 ヴァイオリンでは劉薇による「日傘をさした女」もヴァイオリンの特性を生かした名品。聴きごたえ十分だった。深澤、恵藤久美子、安田謙一郎による「TORIO 2012」は優れた名品だった。この名手たちの特性が生きていた。

 最後に深澤、助川夫人陽子氏による挨拶でコンサートを締めくくった。