歌舞伎座4月公演 夜の部

 歌舞伎座4月公演、夜の部は「彦山権現誓助剣」、新作初演「幻想神空海」の2演目、見所満載であった。

 まず「彦山権現誓助剣」は杉坂墓所、毛谷村を組み合わせた上演で、片岡仁左衛門の独断場というべき舞台だった。杉坂墓所の場での親孝行ぶり、幼子を世話する一方、その身内を探す毛谷村六助を見事に演じた。そこへ師、吉岡一見斎の妻お幸、虚無僧に身を宿した許婚で、師の娘お園が現れる。

 そこで師の安否を問うと、師が京極内匠に殺され、妹も返り討ちにあったという。六助の許へやって来て、自分と立ち合いをして勝った微塵弾正がその男とわかる。そこへ杣人、斧右衛門が内匠に殺されたため、敵を討ってほしいと頼んでくる。この場面も見所満載だった。お園と婚礼を上げた六助は衣服を改め、紅梅、椿を手に小倉城へと向かう。片岡孝太郎、中村東蔵、坂東弥十郎が素晴らしい演技を見せた。

 新作初演となった「幻想神空海」は夢枕獏によるもので、2013年初演となった「陰陽師」に次ぐ作品。中国密教の総本山、青龍寺の恵果和尚のもとで密教の奥義を学ばんとする空海が皇帝呪詛事件解決に奔走する。そこに玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を絡ませている。楊貴妃が僧高鶴と弟子、白龍と丹龍が仮死の術で生き延びることとなったとはいえ、発狂した。玄宗と楊貴妃が過ごした華清宮で宴を開くと、楊貴妃、高鶴と2人の弟子が現れる。高鶴と白龍は刺し違いになる。空海は密教の奥義を学び、親友橘逸勢とともに憲宗皇帝に謁見、日本へと帰っていく。

 真言宗開祖で唐で密教を学び、書の名人と詠われた空海を市川染五郎、親友橘逸勢を尾上松也が見事に演じた。中村歌六の丹龍、中村歌昇の白楽天、白龍を演じた中村又五郎、高鶴を演じた坂東弥十郎の好演ぶりは高く評価したい。憲宗皇帝を演じた松本幸四郎の貫禄たっぷりの演技もドラマの締めくくりに相応しかった。

 今回の初演は若干の問題もあろうが、見所満載のスペクタクルたっぷりの内容だった。再演を楽しみにしたい。