日本舞台芸術振興会、チャイコフスキー記念東京バレエ団代表で日本の舞台芸術水準の向上、ヨーロッパの名門歌劇場、バレエ団招聘に努めた佐々木忠次氏が心不全のため、83歳で亡くなった。
氏は講談社から「オペラ・チケットの値段」、音楽之友社から「だからオペラは面白い」を出版、オペラの舞台裏、チケットの値段といった業界の本音、オペラの舞台裏を私たちのもとに伝えた。「だからオペラは面白い」ではマネージメント会社の役割、弊害に言及、高額出演料を要求するような態度への批判が見られる。その際、氏はチケットの値段を下げるためには一人で海外に行き、交渉する。安いホテルに泊まり、運転手付きの車は不要、コストダウンと交渉能力が必要だと説く。日本の音楽マネージメント業界にはこの種の能力が必要ではなかろうか。コンサートでも交渉力、コストダウン次第なら、チケット料金も安くなるはずである。そうしたノウハウがあれば、高額入場料は改善できる。これまでの日本の音楽マネージメント業界の弱さを改善するには、佐々木氏のような交渉力とコストダウンを身につけることが必要だろう。その上で、これからの日本の音楽マネージメント業界のあり方を身をもって示した一人だろう。
また、昭和の終わりから平成にかけてのバブル期、電通、博報堂がらみの企業協賛金が広まった時、氏はそのあり方に対しても批判の目を向けた。そのような協賛金を拒否した態度は見事だった。時流への厳しい視点も兼ね備えていた。
今、音楽大学で音楽マネージメントに関する学科ができ、マネージメント業界への人材育成も始まった。佐々木氏のようなしっかりした視点に立つ人材が輩出するかがカギだろう。音楽マネージメント業界のあり方に一石を投じた人だけに大きな存在だったといえよう。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:53)
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