日本経済の現状と音楽

 KAJIMITO会長、梶本尚康氏と日本舞台芸術振興会・東京バレエ団代表、佐々木忠次氏の逝去で音楽マネージメントの一つの時代が終わった。2,3万円台から5,6万円台の高額入場料時代は終焉に向かうだろう。1980年代末から1990年代初めにかけてのバブル経済による悪しき慣習となった高額入場料が日本経済の低迷期となり、格差社会となった今、1995年から始まったラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンによる廉価な入場料で家族で気軽にコンサートが聴けるようになったことも相まって、見直しを迫られるだろう。もはや、コンサート・オペラに2,3万から5,6万円出せる時代は終わるだろう。

 また、格差社会が進み、子どもの貧困問題が深刻化して給付型奨学金創設が叫ばれる今、ピアノ教師たちを始めとした音楽教師たちも生徒が集まらない。いずれ、音楽教師も貧困化していくだろう。生活困窮家庭の子どもたちへの進学の道を開くため、無料学習教室が増えつつある。こうした子どもたちに音楽の道を開くためにも無料音楽教室を開設して、日本の音楽文化向上につなげることを考えるべき時ではなかろうか。

 無料音楽教室を開設するなら、最近増えつつある空き家を利用し、ミニ・ホールを設置してコンサートを開催することを考えてもいいだろう。子ども、高齢者を無料として、地域が繋がることも大切である。殊に高齢者の場合、孤立しやすいため、気軽に外出できる手段になり、本格的なコンサートに足を運べない親子連れにもいい機会となる。コンサートが地域活性化の場になることは経済効果をもたらすことにもなる。

 日本も本当の文化国家になる時期が来ている。いつまでも過去の高度経済成長期の遺物にしがみつくより、自分たちの文化を創り出す時が来た。そうした意味でも今の日本に見合った音楽文化のあり方を考える時期である。