20世紀音楽を語る上で重要な12音音楽を確立したアルノルト・シェーンベルク(1874-1951)最初のピアノ作品、3つのピアノ曲、Op.11。カナダの奇才グレン・グールド、20世紀最高のピアニスト、マウリツィオ・ポリーニで聴き比べていく。
まず、グールド。神秘的な雰囲気が漂う。1958年録音、この頃のグールドはコンサート・ピアニストとして華々しい活躍ぶりをみせ、作品への共感が高い。第2曲ではけだるい性格を見事に表現している。第3曲も性格付けが素晴らしい。
ポリーニも20世紀音楽を得意とし、シェーンベルクは研ぎ澄まされた感性、音色が聴きものである。グールドより鋭く、峻厳な音楽となっている。1974年録音、全体的に洗練され、宇宙の神秘を伝えるかのような演奏である。むしろ、グールド以上にシェーンベルクの本質を伝えているようにも思える。
シェーンベルクはブラームスの音楽を深く研究し、12音音楽を確立するに至った。ブラームスの緻密な音楽技法を自らのものとして12音音楽の体系化、理論化につなげた。また、論文「革新主義者ブラームス」も残している。
シェーンベルクはマーラーと親交を結んだことで、世に出る機会となった一方、マーラーはシェーンベルクの作品に触れ、シェーンベルクを経てブラームスの音楽を受容することとなる。
マーラー自ら、
「視野の狭い小人。」
と批判したブラームスの音楽をシェーンベルクから知ることとなり、自らを恥じただろう。ブラームスなくして12音音楽を語ることはできない。
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