歌舞伎座5月公演、恒例の団菊祭。昼の部は「鵺退治」、「寺子屋」、「十六夜清心」、「楼門五三桐」の4演目で、バランスのとれた上演構成であった。
「鵺退治」は1962年1月に上演以来54ぶりの上演となった。中村梅玉の源頼政、中村魁春の菖蒲の前が素晴らしい演技を見せた。中村又五郎の猪の早太、中村錦之助の関白九条基実が色を添えた。この再演は成功したと言えよう。
「寺子屋」は市川海老蔵の松王丸が見ものだった。成田屋型では見得が目立つ。その中にも人間の悲哀を秘めている。わが子小太郎を菅宰相の子、菅秀才の身代わりとして主君に報いんとする心、わが子への熱い思いを合わせ持つ。海老蔵はその心情を見事に描き出した。尾上菊之助の千代、尾上松緑の武部源蔵、中村梅枝の小浪も見事だった。
「十六夜清心」は恋仲になって心中したものの、ともに助かり、行き別れとなった清心と十六夜の悲劇を描く。尾上菊之助、中村魁春、市川左団次が味わい深い演技を見せた。
「楼門五三桐」は中村吉右衛門、尾上菊五郎のやり取りが昼の部を見事に締めくくった。今回、54年ぶりとはいえ再演となった「鵺退治」は注目すべき演目といえよう。こうした演目もどんどん上演してほしい。
コメントをお書きください