歌舞伎座5月公演 団菊祭 夜の部

 歌舞伎座5月公演、団菊祭、夜の部は尾上菊之助の長男、寺島和史君のお披露目となった「勢獅子音羽花籠」、「三人吉三巴浪」、「今時也桔梗旗揚」、「男女道成寺」の4演目であった。

 まず、「勢獅子音羽花籠」は寺島和史君のお披露目に相応しい雰囲気に溢れていた。和史君は疲れ気味の様子だった。「三人吉三巴白浪」は尾上菊之助、市川海老蔵、尾上松緑が光った。お嬢、お坊、和尚吉三が義兄弟となり、お嬢が音瀬から盗んだ金を和尚が預かる形で円満に解決する粋なとりなしが見事だった。

 「今時也桔梗旗揚」は尾上松緑、市川団蔵、中村梅枝、中村時蔵が見事な芝居を見せた。明智光秀が本能寺の変で織田信長を倒すに至った過程を克明に描きだしていた。その中で光秀の様子を窺っていた森蘭丸を中村萬太郎の演技が克明に光秀の心理を描きだしていた。

 「男女道成寺」は尾上菊之助、市川海老蔵の息の合った踊り、演技が締めくくりに相応しかった。また、所化たちの演技、踊りも花を添えた。

 いよいよ6月、3部制「義経千本桜」である。市川染五郎、松本幸四郎、市川猿之助の共演が見ものとはいえ、内容面では「鳥居前」がないことは問題だろう。