中国出身のヴァイオリニスト、劉薇が来日30周年を記念してリサイタルを行った。西安、唐王朝時代の首都長安出身といえば、日本との縁も深い。中国の作曲家で文化大革命で故国を追われた馬思聡(1912-1987) のヴァイオリン作品研究に取り組み、博士号を取得、作品普及、中国文化大革命期の音楽に関する講演も行ってきた。
今回は馬思聡の小品3曲、助川敏弥「日傘をさした女」、スメタナ「わが故郷より」から2曲、ベートーヴェン、ソナタ第9番、Op.47「クロイツェル」を取り上げた。
馬思聡「春天舞曲」、「牧歌」、「山歌」は中国の雄大な自然を思わせる名曲で、ヴァイオリンの抒情性豊かな作品であり、日本でも演奏されてもいい。助川作品は4月20日の追悼コンサートでも演奏しているが、今回の演奏が一層豊かな表現力溢れる演奏だった。
ベートーヴェンは自ら腎臓病を患い、絶望の中、ベートーヴェンの音楽の力に癒されていった思いが伝わり今日、食事療法によって回復、多くの人々に食生活の大切さを説く原動力になったことが頷けた。
アンコールはクライスラー「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」、ボルムベスク「望郷のバラード」で、じっくり余韻を味わうことができた。
日本人にとって中国の音楽の実態は伝わってこない。その意味で劉薇の活動の意義は大きい。今後、日本人が中国、ひいてはアジア諸国の音楽に関する研究を行える環境づくりが整うことを望みたい。
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