新日本フィルハーモニー交響楽団、第559回定期演奏会は日本を代表する作曲家、三善晃(1933-2013)「管弦楽のための協奏曲」、矢代秋雄(1929-1976)ピアノ協奏曲」、黛敏郎( 1929-1997)「涅槃交響曲」によるプログラムであった。(27日 すみだトリフォニーホール)前半に三善、矢代作品、後半に黛作品を置くプログラム構成で、黛作品は1階の通路に金管、木管楽器奏者を配置する形態を取った。
三善作品は静と動のコントラストが特徴で、ダイナミックな作品である。矢代作品は日本のピアノ協奏曲の傑作で、トーマス・ヘルのピアノも見事だった。黛作品はまさに、日本を代表する傑作だろう。
黛、矢代、三善はフランスに学んだ。矢代は1956年まで留学し、「美しく仕上げる」ことを学んだ。生涯、主要作8作という寡作家だったことも頷ける。妥協を排し、真の美と音楽を追求したものの、46歳で急逝したことは惜しい。三善は近代との対峙から己を見つめた。黛は「西洋に学ぶものなし」といって1年で帰国、留学中に三島由紀夫と出会う。電子音楽、ミュジック・コンクレートを手掛け、芥川也寸志、団伊玖磨と「3人の会」を結成、戦後音楽界をリードする。また、テレビ番組「題名のない音楽会」で音楽の大衆化にも尽力した。ただ、1970年代以降、ナショナリストとしての発言が目立ち、楽壇から敬遠されるようになった「負の面」もある。黛も昨年、オペラ「金閣寺」が神奈川県民ホールで上演となり、復権も進んでいるとはいえ、「負の面」ゆえの難しさがある。
このプログラムを組んだ下野竜也の心意気を買いたい。「負の面」を抱える黛であっても、黛再評価につながる。矢代、三善の功績も然り、日本の作曲家たちの作品がオーケストラ・レパートリーとして定着することを願いたい。
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