ロシアを代表する指揮者の一人、ユーリ・テミルカーノフ率いるサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団、演奏会(2日 サントリーホール)は、20世紀ロシアを代表する作曲家ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)、交響曲第7番、Op.60「レニングラード」を取り上げた。
このオーケストラではショスタコーヴィチの作品の多くを初演しているため、「ドミトリー・ショスタコーヴィチ記念」の名を加えている。
今回取り上げた「レニングラード」は1941年、ドイツ軍がロシアに侵攻、レニングラードを包囲した折、ショスタコーヴィチはこの地に残り、市民を励ましつつ書き上げた作品である。全曲の演奏には1時間20分余りを要するとはいえオーケストラ、テミルカーノフの自信が伝わり、包囲下のレニングラードの有様が伝わって来る名演だった。
1943年のスターリングラード(ヴォルゴグラード)でロシア軍がドイツ軍を破った後、ロシアの反撃が本格化、1944年にはレニングラードも解放、1945年にドイツへ進撃、降伏させる。しかし、ショスタコーヴィチはスターリン、後にはブレジネフへの批判も行い、ロシアを見つめ続けた。
1991年、ソヴィエト連邦消滅、ロシアに戻ったとはいえ、ロシアの音楽家たちにはショスタコーヴィチへの熱い思いがある。それが今回の演奏にも強く表れていた。
今、ロシアの音楽事情を見ると、サンクトペテルブルクが活気づいている。テミルカーノフ率いるサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団、ヴァレリー・ゲルギエフ率いるマリインスキー劇場の活躍は素晴らしい。この秋、ロシアの指揮者では最も勢いあるゲルギエフもマリインスキー劇場を率いて来日、楽しみである。
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