テミルカーノフ率いるサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団の来日コンサート、最終日はニコライ・アンドレーヴィチ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)、交響組曲「シェエラザード」Op.35、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)、交響曲第6番、Op.74「悲愴」、ロシア音楽の名曲によるプログラムであった。
前半のリムスキー=コルサコフはアラビアン・ナイトの世界を描きだした名演であった。女性不信の王の荒々しさが最後にはシェエラザードの前に崩れ、幸せな毎日を送る。ヴァイオリンで描かれるシェエラザードの主題がチェロでも描かれる。最後の第4曲で全体の主題が現れ、船が沈むところで王が女性の真の愛情に目覚めていく。シェエラザードの主題から静かに締めくくる。幸せの日々の始まりである。
チャイコフスキーは最後の作品であり、己の運命に怯え、死と隣り合わせの心境が生々しく伝わってきた。チャイコフスキーは一時期、自殺を装って殺されたという説が話題となった。結局、コレラによる病死に落ち着いたとはいえ、まだ論争が生ずる可能性がある。今後、新たな発見があるだろう。
リムスキー=コルサコフはチャイコフスキーとはよきライヴァルで、チャイコフスキーの死後、プロの作曲家として大成する。オペラも東洋を題材にしたものが目立ち、最後の作品となった「金鶏」はシベリアの怪僧ラスプーチンに翻弄される当時のロシア帝国を皮肉ったため、上演禁止となった直後にこの世を去った。その意味で「シェエラザード」は重要だろう。
今、ロシア音楽で最も活気あふれるサンクトペテルブルクが今後、どのような発展を遂げるか見逃せない。首都モスクワはボリショイ劇場が立ち直りつつある。モスクワの音楽事情もどう変わるか。ロシア音楽界の今後に期待しよう。
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