調布音楽祭 2016の締めくくりは鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハ、管弦楽組曲第3番、変テル「水上の音楽」全曲であった。
バッハとヘンデル。共に1685年生まれでバロック音楽の締めくくりとなった大作曲家である。1719年、1729年、この2人が会おうにも会えなかったことは残念である。バッハは「マタイ受難曲」、「ヨハネ受難曲」「クリスマス・オラトリオ」、ロ短調ミサ、多くの教会カンタータをはじめとした教会音楽、室内楽曲、クラヴィーア、オルガンのための作品を残した。ヘンデルはイタリア・オペラ、英語によるオラトリオ、室内楽曲、クラヴィーア作品を残した。
今回取り上げた「水上の音楽」全曲は、2004年発見の新しい資料によるヘンデル全集新版(2007年)によるもので、これまで21曲とされたものに新たに1曲が加わり、全体の流れを重視した内容で、変化に富む自由な作品の性格から国王ジョージ1世の舟遊びを再現するものとなった。ヘンデルがロンドンに渡ったことは、当時のハノーファー選帝侯国の諜報員としての任務だったという説が有力となっている。ハノーファー選帝侯、ジョージ1世はスチュアート朝最後のアン女王急逝後、イギリス国王となっている。その上、英語も話せなかったためイギリスにもなじめず、不人気だったため、舟遊びを催すことととなり、ヘンデルに作曲を依頼した。
今回の新版による演奏は、テムズ川での舟遊びの光景を忠実に再現、自由でスケールの大きな構成による作品だったことを再認識させた。演奏も自由闊達、かつスケールの大きな内容だった。
来年の調布音楽祭が楽しみである。
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