歌舞伎座7月公演 夜の部

 歌舞伎座7月公演、夜の部は人情劇「荒川の佐吉」、歌舞伎十八番「鎌髭」、「景清」で昼の部同様、市川海老蔵、市川猿之助、市川左団次、市川右近、市川男女蔵、市川中車、尾上右近、坂東巳之助といった大御所、花形たちによる豪華な舞台であった。

 「荒川の佐吉」は市川猿之助、坂東巳之助の掛け合い、市川男女蔵の重量感ある演技、市川中車の味のある演技が光った。大工からやくざに身を落としたとはいえ、人情味溢れる佐吉が親分、仁兵衛の娘、お新が生んだ卯之助を引き取って育てたとはいえ、お新が大店の奥方になって卯之吉を返してほしいといっても自分が育てた以上、返すことを渋る。しかし、口入れ屋を営む相模屋政五郎の説得に応じ、卯之吉をお新のもとに返し、江戸を去っていく。朝の桜が咲きほころび、散り行く中の旅立ちは余韻たっぷりだった。市川猿之助の素晴らしい性格描写、坂東巳之助もこれに応じていた。そこに市川中車が味わい深い演技でドラマを盛り立てた。市川海老蔵の成川郷右衛門も花を添えた。

 「鎌髭」は市川海老蔵と市川右近、「景清」は市川海老蔵と市川猿之助との掛け合いが見事で、「景清」の最後で市川海老蔵にちなみ、舞台背景の伊勢海老が華を添え、素晴らしい締めくくりとなった。

 8月の納涼歌舞伎でも市川海老蔵、市川猿之助が出演、どんな舞台を見せるかが楽しみである。