歌舞伎座8月公演は納涼歌舞伎として3部制を取り、初めて歌舞伎に接する人、子どもたちの歌舞伎入門としても定着している。今回の第1部は「嫗山姥」、「権座と助十」、第2部は「東海道中膝栗毛」、「紅翫」であった。
まず「嫗山姥」では中村歌女之丞、中村扇雀、中村橋之助の演技が光る。坂東新悟演ずる沢潟姫を守り、気丈な局藤波を見事に演じた。10月に中村芝翫を襲名する中村橋之助も力のこもった演技が見ものだった。中村扇雀の八重桐も最後、坂東巳之助演ずる太田太郎たちを見事に退ける場面では見せ場を作った。「権座と助十」は何といっても坂東弥十郎演ずる大家六郎兵衛が全体を見事にまとめた。中村獅童の権三、市川染五郎の助十、中村七之助のおかん、坂東巳之助の助八、澤村宗之助の与助、中村壱太郎の彦三郎も好演で、片岡亀蔵の勘太郎が悪人の本性を出すまでを見事に演じた。
「東海道中膝栗毛」は市川猿之助、市川染五郎の息の合った演技、ロックと和楽器との融合、アメリカ、ラス・ヴェガスを表出した舞台、アラブの王侯、最後のお伊勢参りの花火に至るまで見せ場満載の舞台を満喫した。また、家督相続・母の病気平癒祈願の大名の若君、近習を演じた松本金太郎・市川団子、天照大神を演じた市川笑也などが光る。「紅翫」は第2部締めくくりに相応しい内容だった。殊に中村橋之助の踊りが光った。
中村橋之助が10月、中村芝翫襲名に当たり、橋之助としては最後になるとはいえ、襲名に相応しい充実した舞台を演じている。「東海道中膝栗毛」での市川猿之助ならではの新しさも歌舞伎の楽しみを味わうことができた。子どもたちも満足しただろう。
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