韓国で「世宗カメラータ」によるオペラ育成運動が起こっている。これは16世紀末、イタリア、フィレンツェで古代ギリシア劇復活を掲げて結成された「カメラータ」にちなみ、韓国におけるオペラ創作、上演を目指し、作曲家イ・ゴニョンを中心にキム・ジェヒョブらと共に2012年からこのプロジェクトを始めた。
イ・ゴニョンはアメリカ、ニューヨークで創作ミュージカルの授業を受けた際、台本作家、作曲家、演出家が対等であることから、オペラに応用できると考え、互いに切磋琢磨し合ってよいものを作ること、演劇としてのオペラ、作家が作曲家にすべて任せることが大切という結論に達した。
さて、翻って日本はどうか。団伊玖磨「夕鶴」が名作として上演されているとはいえ、日本オペラが確立しているか。そう問いかけると、確かに多くのオペラが作曲、上演されても初演の後、何回かの再演があっても定着していない。韓国の試みと比べても、日本はあまり進歩していない。こう見ると、韓国の試みが日本オペラ見直しにつながる可能性もあるだろう。オペラは再演が多くなるほど、オペラとして定着していく。日本オペラ見直しとしても注目すべきである。
「世宗カメラータ」には日本円では年間2000万円~3000万円の予算がある。その7割がソウル市の援助である。日本のオペラ界を見ると、オペラ上演の援助があっても新作オペラ創作のための予算はどうか。オペラそのものへの国、地方自治体の援助は韓国ほどではない。日本も見習うべきではなかろうか。
韓国「世宗カメラータ」の試みが日本オペラ、オペラ界に大きな問いを投げかけている。これが日本のオペラ界、オペラ創作・上演のあり方を見直す一つのきっかけになってほしい。
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