サントリー芸術財団サマー・フェスティバル ウツクシイ・音楽 カイヤ・サーリアホ

 サントリー芸術財団サマー・フェスティバルは板倉康明によるウツクシイ・音楽、今年のテーマ作曲家となったフィンランドの女性作曲家カイア・サーリアホの作品をメインとしたコンサートで、2016年を締めくくった。

 まず、ウツクシイ・音楽。板倉自身の指揮、東京都交響楽団による演奏であった。フランスの作曲家、ブルーノ・マントヴァーニ(1974ー)「衝突」はサントリー芸術財団委嘱作品で初演、これはさまざまな音のぶつかり合いからなり、現代を象徴する作品であった。フィンランドの作曲家、マグヌス・リントベルイ(1958-)ピアノ協奏曲第2番は小管優をソリストに迎えた。小管の凄まじいばかりの気迫のこもったピアノが圧巻で、ベートーヴェン、ピアノ・ソナタ全集のCD、およびコンサートを終え、その充実した活躍ぶりを示した。オーストリアの作曲家、ゲオルク・フリードリッヒ・ハース(1953-)「ダーク・ドリームス」は神秘的な響きが特徴的だった。最後のドビュッシー、交響詩「海」は海の雄大さ、深さを描きだした名演であった。

 フィンランドの作曲家、カイア・サーリアホ(1952-)を中心としたコンサートはスペインの名匠エルネスト・マルティネス=イスキエルドの指揮、東京交響楽団による演奏であった。まず、フィンランドが生んだ大作曲家シベリウス、交響曲第7番、Op.105にに始まり、オーケストラとハープのための「トランス」は、ハープにグザヴィエ・ド・メストレを迎えた。メストレのハープ、オーケストラが神秘に満ちた作品の性格を見事に描き出した。カナダの女性作曲家、ゾーシャ・ディ・カストリ(1985-)「系譜」は、聴きごたえ十分な内容だった。「オリオン」はギリシア神話の狩人オリオンをテーマとした神秘に満ち、哲学的、かつ深遠な内容であった。

 今年のサマー・フェスティバルは佐藤紀雄、板倉康明のプロデュースによるコンサート、武満徹とタン・ドゥンによるコンサート、カイア・サーリアホをテーマとしたコンサートは充実していたとはいえ、第26回芥川作曲賞は残念な内容に終わった。来年2月から、サントリーホールの改修が始まり、9月開催となる。どんな内容になるだろうか。

(29日、30日 サントリーホール)