2016年の最後を飾る歌舞伎座12月公演、第3部は「二人椀久」、「京鹿子娘五人道成寺」の2演目で、坂東玉三郎を楽しむには内容であった。
「二人椀久」は、大阪の豪商椀屋久兵衛、遊女松山との悲恋がもとになっている。椀屋久兵衛は松山に入れあげた挙句、親族たちが座敷牢に押し込めた。座敷牢の中で精神に異常をきたし、放浪をきたした挙句、水死したとされる。そんな久兵衛の哀れさを中村勘九郎が見事に演じた。坂東玉三郎の松山がどこからか現れ、廓通いの頃を思わせるような光景から、巻物を取り出し、消えていく。久兵衛は全てが幻だったとわかり、茫然と佇む。その哀れさが見るものの心に感銘を残していく。
「京鹿子娘五人道成寺」は中村勘九郎・七之助兄弟、中村梅枝、中村児太郎が坂東玉三郎と共に、それぞれの持ち味を発揮して、見事な舞台を作り上げた。「道成寺」には二人ものが一般的とはいえ、五人ものは初めてである。これだけの豪華な演目は、1年の締めくくりに相応しい。その意味でも貴重だった。
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