歌舞伎座、2017年の1月公演、昼の部は「将軍江戸を去る」、「大津絵道成寺」、「伊勢越道中双六」より「沼津」の3本であった。演目のバランスとしてはよかった。
「将軍江戸を去る」は江戸幕府15代将軍、徳川慶喜が1868年4月10日、江戸城を明渡し、翌11日、水戸へ去っていくまでを描いた新作歌舞伎である。この年の9月、慶応4年は明治元年となり、明治維新による近代国家が始まる。幕臣たちによる彰義隊は徹底抗戦を貫く。それを推しとどめんとする山岡鉄太郎、高橋伊勢守がやって来て押し問答となる。寛永寺書院にいる徳川慶喜に勤王の心を説く山岡。それを決意して、水戸へ立つ慶喜。その心境が伝わる。市川染五郎、片岡愛之助、中村又五郎が見事な芝居を見せた。大谷廣太郎、中村種之助、市川男寅、中村歌昇も好演だった。
「大津絵道成寺」は「京鹿子娘道成寺」に基づき、片岡愛之助が五変化による素晴らしい舞台を見せ、中村吉之丞、中村歌昇、市川染五郎が好演だった。
「伊勢越道中双六」から「沼津」は中村吉右衛門、中村雀右衛門、中村歌六が見事な演技を披露した。日本の3大仇討の1つ、「伊賀越の仇討ち」によるもので、実の親子とは名乗れなかった商人十兵衛、雲助平作の悲劇を見事に描いた。「伊賀越道中双六」は3月、国立劇場でも上演されるため、見逃せない。歌舞伎座でも全編上演してほしい演目だが、実現するだろうか。
コメントをお書きください