東京二期会 プッチーニ トスカ

 ローマ歌劇場との提携公演となった東京二期会、プッチーニ「トスカ」最終日は大村博美を中心とするBキャストによる上演で、スカルピア役に予定されていた直野資が体調不良で出演できなくなり、木下美穂子を中心としたAキャストでスカルピアを演じた今井俊輔が出演した。直野は、二期会イタリア・オペラ公演に「この人あり」と言われる存在だけに残念であったものの、今井の素晴らしい歌唱、存在感が新しい時代の二期会イタリア・オペラを支える人材になるだろうと感じた。

 フランス革命期のイタリア、ローマを舞台にオーストリアとフランスの勢力が拮抗する中、ナポリ王国が警視総監に送り込み、革命派弾圧を勧めたスカルピア男爵、革命派の闘士アンジェロッティ、画家カヴァラドッシ、ソプラノ歌手トスカが繰り広げる愛と陰謀のドラマをイタリア・オペラの若手指揮者ダニエーレ・ルスティオーニが東京都交響楽団から素晴らしい音色を引き出し、見事に展開した。

 大村のトスカは激しい気性、スカルピアを刺し殺す大胆さ・残忍さ、カヴァラドッシとの純愛ぶりを見事に演じた。城博憲のカヴァラドッシも芸術家としての誇り高さ、革命の闘士としての気高さ、勇敢さが光った。山口邦明のアンジェロッティはようやく逃げ出した安堵感を表現していたし、峰茂樹の堂守はカヴァラドッシに文句を言いつつもやさしく見守るような暖かさがあった。今井のスカルピアは歌唱・存在感十分で、第1幕のテ・デウムでトスカをわがものに遷都する欲望を表出していた上、第2幕でトスカを威圧するかのような凄みが滲み出ていた。高梨英次郎のスポレッタも好演だった。

 今回の上演は成功だったとはいえ、二期会の歌手陣にも世代交代の波が迫っていることも実感した。今後、どのような人材が出るだろうか。楽しみである。