国立音楽大学在学中から演奏活動を続け、ヨーロッパでのマスタークラスで学んだ野尻多佳子のリサイタルは、シューベルト、シューマン、ショパン、リストとロマン主義の作品を取り上げた。(25日 紀尾井ホール)
シューベルト、3つのピアノ曲、D.946-2では死期が近づくシューベルトの心境を描きだしていた。シューマン、子どもの情景、Op.15には子どもたちを見つめる大人のまなざしが感じられた。ショパン、ノクターン第20番、遺作、アンプロンプチュ第1番、Op.29、リスト、3つの演奏会用練習曲から「ためいき」、巡礼の年第3年から「エステ荘の噴水」にはピアノの歌心、音色の美しさが溢れ出ていた。
後半はリストの大作、ソナタロ短調。楽譜(ヘンレ版)を見ながらの演奏となったものの、一つの楽章にソナタの全要素を盛り込んだ構成には、交響詩を創始したリストの面目躍如たるものがある一方、ソナタと言う楽曲の根源を問うものでもある。古典的ソナタ形式とはいえ、3楽章形式のソナタを融合したリストは、主題動機の展開の根源にも迫った問うべきか。ソナタの根源を問いただしたリストの意図を引き出していた。
アンコールはフィンランドの作曲家、メラルティンの小品2曲。余韻たっぷりであった。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:52)
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