クリスティアン・ツィメルマン ショパン ピアノ協奏曲 第1番 Op.11

 クリスティアン・ツィメルマンはアルトゥール・ルービンシュタインから続くショパンの国、ポーランドが生んだ素晴らしいピアニストであり、ショパン演奏も定評がある。ショパンの協奏曲はカルロ・マリア・ジュリーニなどとの共演があっても、大きな不満を抱えていた。実際、ショパンの協奏曲のオーケストレーションは欠陥があって、オーケストラを殺している面もある。ツィメルマンはショパンのオーケストレーションの見直しによって、今までの響きにない新たな光を当て、協奏曲としての魅力を再評価せんとしたに違いない。

 そこで、ショパン没後150年の1999年にちなみ、銀行をスポンサーに、ポーランドの若手音楽家からなるポーランド祝祭管弦楽団を結成して、ショパンの協奏曲再評価につなげんとして、演奏旅行を行った。しかし、来日がなかったことは残念ではある。

 ツィメルマンの弾き振りが見事で、第1楽章からショパンの音楽に引きこまれてしまう。オーケストラが雄弁、かつ素晴らしいまとまりを見せ、ショパンが引き出したかった歌心に満ち溢れている。ピアノにもショパンの音楽の心髄が満ち溢れ、美しくも鋭い響き、何かを訴えんとするものが伝わって来る。コーダの余韻、最後の和音がずっしりした重みで響き、充実感がある。

 第2楽章、ロマンスはオーケストラがしっとり、かつ深みのある響きで歌い出す。それがピアノにも影響して、深みに満ちた素晴らしい歌心、心に響く音楽となっている。オーケストラ、ピアノと共にショパンが描きだした世界を見事に表現している。

 第3楽章、オーケストラの重厚な響きからピアノがロンド主題を歌い出す。ツィメルマンのピアノが雄弁、かつ素晴らしく展開する。オーケストラが充実した響きを見せる。それがピアノと見事に調和している。抒情性も十分で、ツィメルマンがショパンの協奏曲に寄せる思いが聴こえる。ここでもオーケストレーションの見直しがある。

それによって、ショパンの音楽の魅力がかえって引き出され、ピアノの持ち味が倍増している。

 ツィメルマンがショパンの音楽の新たな魅力を引き出し、再発見した演奏として、今後長く聴き継がれるものになるだろう。