20世紀を代表する作曲家の一人、武満徹(1930-1996)の本格的な評伝が出た。著者、小野光子は20世紀の文化を築いた存在として捉え、音楽はもとよりテレビ、ラジオ、映画、演劇との関わりから武満の全体像を考察、再評価したことは大きい。
小野は「日本の作曲20世紀」、「武満徹 音の河のゆくえ」で武満作品のリストを作成、小学館から出た「武満徹全集」の編集、新潮社から出た「武満徹作品集 5」では作品表作成に当たり、訳書として、ピーター・バート「武満徹の音楽」がある。本著は小野の武満研究の総決算である。
武満夫人、浅香氏をはじめ、多くの人々の協力あっての成果であり、武満徹の全体像をくまなく描きだしたことには敬意を表したい。映画音楽、放送音楽での武満の功績は計り知れない。ことに、1981年、NHKで放送されたドラマ「夢千代日記」の素晴らしさは多くの人々の心の中に焼き付いている。その他、映画音楽での武満の功績も日本音楽学会でも取り上げられた。
私たちは、20世紀音楽で武満徹の音楽がレパートリーとして定着していることをどう考えるか。この書にはその答えがある。武満研究には座右の一冊となろう。
(音楽之友社 5500円+税)
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:52)
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