歌舞伎座8月公演、納涼歌舞伎第3部は坂口安悟原作、野田秀樹作「桜の森の満開の下」であった。壬申の乱と天武天皇即位により、唐・新羅に倣った強力な中央集権国家成立期の日本を背景に、人間と鬼が混在するという設定のもと、長い耳の持ち主、耳男、山賊マナコ、オオアマがヒダの国へ招かれ、像を掘る。鬼退治の巻物を欲したオオアマ、刀を作るマナコ、耳を切られてバケモノを作る耳男。そこに、ヒダの国の二人の姫、早寝姫、夜長姫の恋が絡んでくる。天武天皇即位、大仏開眼の後、桜の森で夜長姫と耳男が再会、夜長姫は息を引き取り、耳男だけになる。
人間と鬼が住む世界でも野望、欲望、恋が絡む。そんな世界を見事に歌舞伎で再現した舞台作りは素晴らしい。中村勘九郎・七之助兄弟を中心に、市川染五郎、中村扇雀、坂東弥十郎が見事な芝居を見せた。
中村勘三郎は野田秀樹との出会いで、歌舞伎の新たな可能性を追求していった。今回の上演は2人の遺児、勘九郎・七之助兄弟が見事に引き継いだ。市川猿翁がオペラ演出を手掛け、オペラ界に大きな影響を与えたように、伝統を守る一方、歌舞伎の可能性を追求することも大切だろう。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:51)
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