サントリー芸術財団、サマーフェスティバル、ザ・プロデューサー・シリーズは平尾貴四男(1907-1953)と同じく46歳で早世した作曲家、大澤寿人の作品3曲によるコンサートからスタートした。大澤は戦前日本のモダニストとしてアメリカではコンヴァースに学び、アメリカに亡命直後のシェーンベルクにも学んだ。フランスではデュカス、ナディア・ブーランジェに学び、作品発表会も開き、オネゲル、イベールの賞賛を受け、1936年に帰国した。東京、大阪で自作を披露しても、大澤のモダニズムは当時の日本には先鋭過ぎたため、評価を得られなかった。また、1931年から1945年の15年間にわたる戦争の影もあっただろう。今回は世界初演となったコントラバス協奏曲、交響曲第1番、ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」の3曲を取り上げた。
指揮山田和樹、日本フィルハーモニー交響楽団、コントラバス独奏が佐野央子、ピアノが福間洸太郎。山田が素晴らしい統率力で日本フィルハーモニー交響楽団から素晴らしい響き、音楽を引き出した。佐野のコントラバスは好演だった。福間のピアノの素晴らしさが際立った。まさに神風だろう。交響曲は編成、楽曲規模では戦前の日本洋楽史では最大だった。それだけの響き、音楽が伝わった。
戦後の大澤は神戸女学院での後進の育成、放送、宝塚歌劇団での活躍で多忙だった。1953年に急逝。アメリカ行きを考えていたものの、実現しなかった。今回のコンサートが本格的な大澤再評価への第1歩となって、その全体像解明にもつながることを期待したい。
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