サントリー芸術財団、サマー・フェスティバルは会場をブルーローズに移して「戦後日本と雅楽 みやびな武満 あらぶる黛」のタイトルで、戦後日本を代表する作曲家の雅楽、武満徹「秋庭歌一具」、黛敏郎「昭和天平楽」を取り上げた。
遠く飛鳥・奈良時代、平安時代の貴族社会の音楽であった雅楽は、武家社会となった鎌倉時代、室町時代には衰退していった。しかし、明治の近代日本では洋楽と共に共存、現代に至る。武満、黛が日本の伝統音楽、雅楽で重要な作品を残したことは大きいだろう。
武満はあくまでも雅楽の伝統を重視して、新しいものを築いていった。世界に大きな衝撃を与えた「ノーヴェンバー・ステップス」を深化させ、無駄のない音楽に仕上げた。武満の音楽は尤も雅楽の本質に行きついた作品と見ることが出来るだろう。
これに対し、黛はパリに留学しながら、「西洋に学ぶものはない」として半年で帰国、ミュジック・コンクレート、電子音楽に取り組む。パリ留学中、三島由紀夫と出会ったことは、黛の後半生を決定的にした。「昭和天平楽」を作曲した1970年11月25日、三島が自衛隊に乱入、割腹自殺した「三島事件」以降、黛の政治発言が本格化、創作活動はオペラ「金閣寺」、「古事記」、バレエ「ザ・カブキ」と少なくなった。この作品は黛が雅楽に新しい感覚、廃れた林巴楽を復活させんとして取り組んだもので、黛ならではの意気込みが感じられた。
今回出演の怜楽舎、指揮の伊佐治直の素晴らしい演奏は、武満、黛の雅楽の本質を伝えた。「みやびな武満 あらぶる黛」に相応しい。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:51)
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