マティアス・ゲルネがクリストフ・エッシェンバッハとともに予定していたシューベルト「冬の旅」が、エッシェンバッハの手の故障でマルクス・ヒンターホイザーに代わったとはいえ、名演であった。(サントリーホール)
2007年、東京オペラシティ コンサートホール、2014年、紀尾井ホールで3大歌曲集としてコンサートを行ったゲルネが、CD12枚のシューベルト・エディションで共演、指揮者に転向したエッシェンバッハのピアノも聴けるコンサートなら期待が大きかっただろう。代わったヒンターホイザーも素晴らしいパートナーとして、ゲルネを盛り立てていったことは評価したい。
ゲルネが全24曲で、恋に破れた若者として演技性溢れる歌唱を披露、リアリティに満ちた「冬の旅」を聴かせたこと。これが大きい。オペラでの経験を活かしつつ、この作品に挑んだ姿勢は見事だった。最後の「辻音楽師」の余韻溢れる歌が絶品だった。
ただ、曲が終わったとたんに拍手が入ったことは残念だった。作品全体の余韻を感じてから拍手すべきではなかろうか。いささか興ざめだったことは指摘したい。
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