NHK交響楽団のオーチャードホール定期演奏会も96回目となった。今回はシンガポールの若手指揮者ダレル・アン、ピアノはペーター・レーゼルと共にドイツ・ピアノ界を代表する大御所、ゲルハルト・オピッツを迎え、ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第5番、Op.73「皇帝」、ムソルグスキー=ラヴェル「展覧会の絵」を取り上げた。
今回の演奏会はオピッツの出演と相まって、ほぼ完売、立見席も出た。それだけに期待の大きなコンサートだった。ちなみに、2016年の定期にはレーゼルが第3番を演奏している。このシリーズにドイツ・ピアノ界の大御所2人が出演した意義も重い。
「皇帝」でのオピッツの円熟した、素晴らしい演奏には安定感が増し、確固としたものが感じられた。豪放さ、抒情性が一体化した大きな世界が広がった。「展覧会の絵」はアンの卓越した指揮ぶり、音楽作りが作品の性格を浮き彫りにした。アンコールではラヴェル「逝ける王女のためのパヴァーヌ」が余韻たっぷりであった。
プログラムについて1か所指摘したい箇所がある。オピッツはヴィルヘルム・ケンプの許で学んでいるとあるのに、ヴィルヘルム・バックハウスに師事したと記している。全くの誤りである。こんな誤りを記すとはオピッツにも失礼だろう。
12月15日、東京オペラシティ・コンサートホールでのオピッツのシューマン、ブラームスシリース第3回が楽しみである。2018年は5月にレーゼル、11月~12月にオピッツがやって来る。ドイツ・ピアノ界の両大御所によるドイツ・ピアノ音楽の心髄を心ゆくまで味わえる一時は、多くのファンを集めるだろう。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:51)
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