アルトゥール・シュナーベル(1882-1951)はベートーヴェン、シューベルト、ブラームスの演奏では第1人者であった。ベートーヴェン、ブラームスではヴィルヘルム・バックハウス、ヴィルヘルム・ケンプに押されがちである。シューベルトではソナタの再評価に貢献している。
シューベルト最後のソナタとなったD.960の演奏を聴くと、第1楽章では息の長い旋律をたっぷりと歌いながらも、死を悟ったシューベルトの姿を描きだしている。自然な流れが息づいている。第2楽章では死と直面するシューベルトの姿、救いを求める姿との対比が際立ち、素晴らしい音楽に昇華している。第3楽章ではピアノと戯れるかのような、円熟の境地が感じられる。第4楽章のスケールの大きな演奏も聴きものである。
シュナーベルはユダヤ系だったため、ナチス台頭に伴ってアメリカへ亡命、戦後ヨーロッパへ戻り、この世を去った。日本では国立音楽大学で教鞭を執った青木和子がシュナーベルに師事している。青木自身、日本の終戦記念日に亡くなったことを象徴的に捉えていた。
このシュナーベルの演奏は、アルフレート・ブレンデル(1931-)にも大きな影響を与えたような気がする。いかがだろうか。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:50)
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