仲道郁代のリサイタルシリーズ、ベートーヴェンと極めるピアノ道、第1回は「パッションと理性」としてモーツァルト、ソナタ第8番、K.310、ベートーヴェン、ソナタ第23番、Op.57「熱情」、ブラームス、ソナタ第3番、Op.5の3曲を取り上げた。
モーツァルトは流麗でありながら、暗い内面性をじっくりと描き出している。第2楽章の豊かな歌心がかえって第1、第3楽章とのコントラストを引き立てていた。ベートーヴェンは豊かなパッションと歌心が調和して深い内面性、ドラマトゥルギーの表出に成功した。
ブラームスでは第2楽章、第4楽章の素晴らしい歌心が絶品だった。恋愛の高まり、失恋の思いを見事に描き出していた。それが第1、第3楽章のドラマトゥルギーを際立たせていた。第5楽章のコーダの追い込みから、ブラームスの青春の苦悩に打ち勝った喜びが伝わった。
アンコールはブラームス、インテルメッツォ、Op.118-2、エルガー「愛の挨拶」。ブラームスの味わいに満ちた歌が素晴らしい。
伊藤恵、仲道郁代がベートーヴェン中心のリサイタルシリーズを始めたことは、2020年のベートーヴェン生誕250年、2027年の没後200年を見据え、ベートーヴェンの音楽への再認識を示すものとして意義深い。ベートーヴェン生誕250年で完結する横山幸雄のリサイタルシリーズ共々注目したい。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:50)
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