ピエール・フルニエ、ヴィルヘルム・ケンプによるベート―ヴェン、チェロソナタ全集は1965年2月、パリでのコンサート・ライヴ録音とはいえ、ベートーヴェンのチェロソナタ全曲の規範となる名演である。
Op.5-1,2は1796年、ベートーヴェンがベルリンを訪ねた折、フランスの名手、ジャン=ルイ・デュポールのために作曲、フリードリッヒ・ヴィルヘルム2世の前で演奏している。どちらも2楽章構成で、若きベートーヴェンの面目躍如といったものが感じられる。フルニエ、ケンプが若きベートーヴェンの姿を彷彿とさせる音楽づくりで圧倒する。
op.69は円熟期のベートーヴェンの傑作の一つ。第1楽章のカンタービレの素晴らしい歌いぶり、フルニエとケンプが一体になって歌い上げる。歌に満ちながらも力強さ、スケールの大きさが感じられる。第2楽章、ベートーヴェンならではのスケルツォの不気味さ、スケールの大きさは聴きもの。トリオも歌が溢れている。ロンド風構成は交響曲第4番から見られる傾向で、シューマンに受け継がれている。第3楽章の序奏はケンプの滋味あふれる音色が素晴らしい。これがゲルハルト・オピッツに受け継がれていることは大きい。主部に入ると、フルニエがたっぷり歌い出す。スケールの大きな音楽が繰り広げられていく。この作品は当時、ベートーヴェンの秘書役を務め、チェロの名手であったイグナーツ・フォン・グライヒェンシュタイン男爵に献呈された。
ベートーヴェンのチェロ作品がデュポール、グライヒェンシュタイン、ヨーゼフ・リンケといった名手たちとの出会いによって生まれ、重要なレパートリーとなっていることを見逃してはならない。名手なくして名作は生まれない。それを如実に示している。
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栗木憲子 (土曜日, 06 10月 2018 22:48)
ありがとうございます
admin (木曜日, 21 4月 2022 05:50)
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