クラシック・コンサートの聴き初めとして定着したNHKニューイヤー・オペラコンサートも第62回となった。日本のオペラ界が世代交代を迎えた今、その舞台に立つ歌手たちの活躍が楽しみである。(3日 NHKホール)
オペラ指揮者として定評ある沼尻竜典を指揮台に迎え、東京フィルハーモニー交響楽団、新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部という布陣、アリア、重唱を中心にオペラの場面に合わせた設定がオペラを一段と身近なものにしたことを評価したい。
ソプラノでは伊藤晴、安井陽子が初登場。共に素晴らしい歌唱で聴き手を魅了した。大村博美、森麻季、砂川涼子の歌唱ぶりも定評があり、それぞれの持ち味を出した歌いぶりはさすがだった。メゾ・ソプラノでは林美智子、藤村美穂子の成熟した歌唱が印象に残った。テノールでは名古屋出身の笛田博昭の素晴らしい歌唱が印象深いし、演技力も十分である。福井敬、村上敏明のヴェテランの味わいはいつ聴いても安定感がある。バリトンでは武蔵野音楽大学からアメリカに留学した大西宇宙がこれからの逸材として注目したい。大沼徹、黒田博、青山貴の安定感ある歌も味わい深い。バスの妻屋秀和の味わい深さ、聴きどころを抑えた音楽作りはさすがである。
クラシック・ヴォーカル・グループ、イル・デーヴによる歌3曲が聴き応え十分、河原忠行のピアノ、青山の他に望月哲也、大槻孝志、山下浩司によるアンサンブルが見事だった。
オープニング、フィナーレはヨハン・シュトラウス、オペレッタ「こうもり」から「夜会は招く」「ぶどう酒の燃える流れに」で新年に相応しかった。今年のオペラ界、どうなるだろうか。
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