東京二期会による、黛敏郎「金閣寺」はフランス国立ラン歌劇場での宮本亜門演出によるフランス初演に基づく上演である。(23日、24日 東京文化会館)
巨大なシェルター。そこに主人公溝口の心象風景を表している。これは1991年の日本初演でのヴィンフリート・バウエンファイントの演出を思わせる。宮本の演出では溝口の分身を出したことで、このオペラの本質をかえって明らかにしたともいえようか。また、有為子・女役の歌手を交互に出演させたことも成功した。
溝口は23日が与名城敬、24日は宮本益光。与名城はストレートな歌唱と演技、宮本はストイックさが際立った。2015年の神奈川県民ホールでの上演以来で、役作りが深化していた。鶴川は23日が高田智士、24日が加耒徹。どちらも光った。柏木は23日が山本耕平、24日が樋口達哉。悪魔的な面を見事に表現した。道誼は23日が畠山茂、24日が志村文彦。こちらも好演。富平安希子、嘉目真木子、林正子、腰越真美、星野淳、小林由樹も光る。
ストラヴィンスキー「オイディプス王」を手本としたこともあってか、合唱が重要である。二期会合唱団が見事な先導役となった。指揮のマキシム・パスカルの見事な統率ぶりが東京交響楽団、二期会合唱団の力を十分に引き出し、素晴らしい成果を上げた。
ただ、ダブルキャストとはいえ現代ものの上演が3回、しかもBキャストが1回のみでは何のためかがわからない。せめて4回、A,B各2回ずつの上演にすべきではないだろうか。今後、この点を考えてはいかがか。
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admin (木曜日, 21 4月 2022)
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