アンジェラ・ヒューイットのベートーヴェン、ソナタ集も第7集となった。Op,31-2「テンペスト」、Op.27-
1「幻想風」、Op.79、Op.109を取り上げている。
まず、Op.31-2「テンペスト」第1楽章はどうだろう。ドラマトゥルギーも十分。再現部のレチタティーヴォとカデンツァから第2主題、コーダに至るまでベート―ヴェンのロマン性の表出も見事である。第2楽章でのたっぷりした歌心。深々とした音色。おのずと引き込まれて行く。第3楽章。内面性豊かでかつスケールの大きな音楽が展開する。ドラマトゥルギーも申し分ない。
Op.27-1、ベート―ヴェンの新しい試みが始まる。第1楽章。アンダンテの深い歌、アレグロ・コン・ブリオの闊達さとの対比がくっきりしている。アンダンテに戻り、コーダのたっぷりした余韻は素晴らしい。第2楽章。
スケルツォ主部がノン・レガート気味に響く。かえって不気味さが際立つ。中間部が浮び上がる。スケルツォ主部に戻り、嘲笑するかの如くに締めくくる。第3楽章。序奏-ロンド-序奏-コーダによる。序奏を第3楽章、ロンド以下を第4楽章とする捉え方がある。これは第3楽章として見るべきではないだろうか。序奏の深い歌心がロンドを際立たせている。ロンドの重量感が全体を引き締めている。序奏-コーダの締めくくりも聴きもの。
Op.79。第1楽章のドイツ舞曲風の性格を捉え、一気に流れて行く。展開部はかっこうの鳴き声を思わせるため、「かっこう」のタイトルでも親しまれ、ドイツの森そのもの。第2楽章。メンデルスゾーン、無言歌「ヴェネツィアのゴンドラの歌」を思わせる深みに満ち、それに相応しい音色、歌心が一層が全体の性格を際立たせている。第3楽章。ベートーヴェンのユーモアを捉え、生気に満ちた演奏で締めくくっていく。
Op.109。第1楽章はOp.79、第3楽章の旋律を用いているものの、幽玄の世界と言った方がいいだろう。第2主題があってもつかの間に過ぎない。ベート―ヴェンが到達した世界に相応しい、深い音色で歌い上げている。第2楽章。苛酷な運命を象徴するかのスケルツォ、ここでも深い音色が聴きものだろう。第3楽章。「心から歌い上げて」とベートーヴェンが指示するように、深々とした音色でじっくり歌い上げる。変奏の性格を捉えつつ、音色を活かしている。第6変奏の盛り上がりから主題の回想に至り、深々とした音色で締めくくっていく。バッハ「ゴールドベルク変奏曲」を意識したとはいえ、ベートーヴェンの澄み切った境地を表現している。
ヒューイットも2020年、ベートーヴェン生誕250年を意識しているだろうか。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:49)
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