皆川達夫氏逝去

 日本の中世・ルネッサンス音楽研究の第一人者、皆川達夫氏が93歳で逝去された。氏の著書「中世・ルネッサンスの音楽」「バロック音楽」をはじめ、「西洋音楽史 中世・ルネッサンス」など、優れた書物を残し、キリスト教伝来と西洋音楽受容史の研究に取り組み、「サカラメンタ提要」「オラショ」発見をはじめ、八橋検校「六段」と西洋音楽との接点を発見したことでも大きな功績を残した。

 特に、NHK-FM「バロック音楽の楽しみ」、NHKラジオ第一放送「音楽の泉」第3代解説者を務め、多くの音楽愛好家たちを惹き付けた。前者は1965年~1985年、後者は1988年~2020年3月までの30年余りにわたった。「音楽の泉」は戦後から続くNHKラジオ第一放送の看板番組で、堀内敬三・村田武夫と続き、現在は奥田佳通氏に代わっている。

 「音楽の泉」では、往年の名演奏家たちを積極的に紹介した上、中世・ルネッサンス音楽、バロック音楽も取り上げた。7月~8月にかけて、夏向きにモーツァルトをはじめ、バロックの音楽家たちの作品も取り上げ、気楽に楽しめるようにしたことは氏の大きな功績だろう。放送を中心に、中世・ルネッサンス音楽、バロック音楽普及に取り組んだ功績、中世音楽合唱団を結成して、コンサート活動を行った作品普及も大きいだろう。

 音楽研究では、多くの人材を育て上げ、何人かが活躍している。人材育成にも取り組んだ功績を含め、中世・ルネッサンス音楽、バロック音楽の本質を伝えた功績を改めて評価したい。

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コメント: 4
  • #1

    本野英一 (水曜日, 22 4月 2020 13:32)

    1978年、まだ学部4年生だった頃、先生の講義を聴講したことがあります。高校生時代には必ず聴いていた「バロック音楽の楽しみ」の解説同様の語り口で、ヨーロッパ音楽の源流はグレゴリオ聖歌から始まり、ルネサンス期に確立したことを説く講義に出席できるのが実に楽しかったです。当時の私はまだバロック音楽しか知らず、先生の講義からはとても勉強になりました。もちろん、これをきっかけに先生のご著書を拝読したことは言うまでもありませんし、『レコード芸術』での批評も必ず読んでいました。ご冥福をお祈りいたします。

  • #2

    中山俊夫 (水曜日, 22 4月 2020 19:29)

    バロック音楽の楽しみ、リヒターのマダイ受難曲の格調高い解説など、私の青春時代から66才になる今まで尊敬する方でした。偶然聴いた音楽の泉のお別れの曲がバッハだったことも私にとって忘れがたいものとなりました。長い間どうもありがとうございました。

  • #3

    石井邦彦 (水曜日, 22 4月 2020 20:02)

    学生時代は4年間、お世話になりました。一般教育科目としての音楽ながら単位取得には関係なく、毎年履修させていただきました。小さめの音楽室での講義は立教大学のなかでも人気で、受講するには、「曲当てクイズ」の選抜試験がありましたね。
    講義で中世・バロックからロマン派、近現代まで幅広く、簡単な楽曲分析と鑑賞など、行われていました。
    解説の前と後では、明らかに曲の聴こえ方が違ってきたのをはっきり覚えています。
    また、ベルリン芸大出身の後のソニー社長も務めた大賀典雄氏と音響製品の開発秘話とか興味深く、楽しく受講させていただきました。
    個人的な身の上相談にものっていただき、とても感謝しています。

    ご冥福をお祈りいたします。

  • #4

    田中 博基 (水曜日, 22 4月 2020 22:55)

    心からご冥福をお祈り申し上げます。振り返れば日本におけるグレゴリオ聖歌の大家であられ、私が中学校の合唱部を率いて初めて全国大会に出場したとき、9人の審査員の中で唯一皆川先生が、私の合唱部を第一位にしてくださったことは、長い人生の中でも最大級の誉れでありました。 本当にお疲れ様でした。 合掌・・・