第30回 芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会は、東京芸術大学大学院生3人の作品がノミネートされた。これは異例のことである。これまでの演奏会を見ると、愛知県立芸術大学・京都市立芸術大学・東京学芸大学・桐朋学園大学・国立音楽大学・東京音楽大学などからのノミネートがあり、それなりに優れた作品の受賞があった。今回、東京芸術大学からのノミネートのみとなったことは、優れた作品が集中していたことを示していた。(サントリーホール)
まず、第28回の受賞者、坂田直樹「手懐けられない光」から始まる。3楽章形式で、点描様式・うなり・トリルによる無窮動を用い、光の神秘を描き出した作品で、聞きごたえ十分な作品に仕上がっていた。
選考演奏会は、冷水乃栄流「ノット ファウンド」から始まる。ベートーヴェン、交響曲第9番、Op.125「合唱」を引用して、人間不在の世界を描き出さんとした意図による。作品としては頷けるものがあっても、心に響かなかった。小野田健太「シンガブル・ラブⅡ-feat.マシンカーダ」は夏、セミの一生を基にした作品。自然の神秘が伝わって来た。有吉祐仁郎「メリーゴーラウンド/オーケストラルサークル」は円形配置で、遊園地のメリーゴーランドから無窮動を生み出した作品。着想は面白くとも、心に伝わらなかった。
選考会では、冷水・有吉作品から何も伝わらなかったことが指摘された。小野田作品は音楽から伝わるものがあった。その結果、小野田が受賞した。
最近の選考演奏会を聴いても、心に響く作品に出会えないもどかしさを感じつつ、受賞作品が決まっても、これでいいかと自問することがたびたびだった。今回は心に響く作品に出会うことが出来て喜ばしい一時だった。来年もこの思いが伝わるだろうか。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:49)
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