ハンガリーのピアニスト、ジョルジュ・シフラが1964年、初来日を果たした際、岩城宏之指揮、NHK交響楽団とチャイコフスキー、ピアノ協奏曲第1番、Op.23を演奏した。
第1楽章の華やかな序奏から主部、ロシアの匂いが漂う。決して技巧をひけらかすというものではない。当時のNHK交響楽団が力強さ、歌心を兼ね備えたオーケストラになっていることがわかる。リストを得意とし、「今様リスト」と言われたシフラが指に任せた演奏ではなく、音楽をしっかり掴んだ名演を残していることを裏書きする。
第2楽章。オーケストラのしっかりした足取り。シフラのピアノが歌心たっぷりである。オーケストラとも見事な調和を見せる。
第3楽章。ここでもシフラは音楽を重視した演奏を聴かせる。岩城の指揮もオーケストラをしっかり響かせ、チャイコフスキーの音楽を捉えている。歌心も十分。コーダの壮大さが素晴らしい。56年前の録音とはいえ、あまりにも貴重な記録が鮮明に残っていたことを思うと、これは大きな聴きものだった。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:49)
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