ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ベートーヴェン交響曲全集も第5番に進んだ。日本では「運命」のタイトルで有名とはいえ、ドイツをはじめ、西洋ではタイトルもない。日本人ほどタイトルをつけたがる傾向がある。外国ではタイトルがあっても、例外だろうか。
第1楽章。「運命のモティーフ」が高らかに鳴り響き、楽章全体に流れていく。その迫力が凄まじい。フルトヴェングラーほど凄まじい演奏もない。だから、再現部のオーボエ・ソロが活きる。ただ、最近の演奏には、古楽のからの影響、ピリオド奏法が近代オーケストラにも入っている。それでも、フルトヴェングラーが凄まじさを感じさせる要素は何か。ベートーヴェンへの深い理解だろう。
第2楽章。ヴィオラ・チェロの深い歌が聴きもの。木管楽器もじっくり、かつ深々とした歌を響かせる。全体にどっしりしたものを感じる一方、歌心も失っていない。ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団の長所も活かした、素晴らしい演奏になっている。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団での全集を作っていたらどうだったか。
第3楽章。最近、この楽章はA-B-A-B-A形式での演奏が増えた。それでも、A-B-Aによる演奏もあったりする。フルトヴェングラー、ベーム、カラヤンまではA-B-Aが中心となっている。不気味な主題、運命の動機がからみ、緊迫感溢れるスケルツォとなっている。トリオのカノンも素晴らしい。これが第4楽章に連なり、勝利の行進となっていく。緊迫感と高揚感が見事である。
第4楽章。勝利の行進。第1主題がゆったり目の足取りで始まる。凱旋行進曲のような響きになる。第2主題は運命に打ち勝った者の凱歌の如く響く。展開部で第3楽章が回想された後に再現部に続く手法もベートーヴェンならではだろう。それも活かし、勝利の凱歌を響かせる。
フルトヴェングラーがカラヤンを目の敵にしていたことは有名である。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団もカラヤンの手に渡り、カラヤン王国に仕立て上げたことは周知のこと。そのカラヤンもザビーネ・マイヤー事件がもとで、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団としっくりいかなくなって退任後にあっけなく世を去った。フルトヴェングラーとカラヤンの音作りの基本がヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団にあったとは意外である。
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