2018年限りで引退したポルトガルの名ピアニスト、マリア・ジョアン・ピレシュのバッハ、パルティータ第1番、BWV825にはバッハの音楽のエッセンス、歌が満ち溢れている。
プレリュードの深々とした歌心をはじめ、アルマンド、コレンテ、サラバンド、メヌエットには深々とした歌が流れている。それが心の底から満ち溢れ、深い精神性と調和して素晴らしい説得力を有している。
今でもピレシュ最後のリサイタルのことを思い出す。モーツァルト、ベートーヴェンを中心としたプログラムの中に、全てを語り尽したものを感じた。それを思うと、このバッハも内面から満ち溢れた歌が全体を満たしていることを感ずる。最後のジーグにも歌が満ちている。
パルティータ全6曲は、バッハが宮廷楽長を務めたケーテンのレオポルト侯に世継ぎが誕生したお祝いに奉げている。幼い公子が成長してこの作品を弾くよう望んだとしても、幼くして世を去ってしまう。レオポルト侯も34歳でこの世を去った。
バッハもケーテンで一生を終えようにも、カルヴァン派信仰のレオポルト侯、ルター派信仰のレオポルト侯の母親とのお家騒動が起こって住みにくさを感じたため、ライプツィッヒ、聖トーマス教会カントールに就任、ライプツィッヒで世を去ることとなった。それを思うと、世のはかなさも感じられてしまう。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:48)
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