ヴィルヘルム・ケンプ、ヘンリック・シェリング、ピエール・フルニエによるベートーヴェン、ピアノ3重奏曲第6番は正に名人の味が漂う。
第1楽章の序奏を聴くと、ほの暗さから明るさへと進むうちに、聴き手をベートーヴェンの音楽へ誘う。主部での躍動感も素晴らしい。円熟期のベートーヴェンならではの熟達した手法をはじめ、歌心が滲み出ている。ケンプの味わい深く、慈愛に満ちたピアノの音色が素晴らしい。力強い終結ではなく、静かで味わい深い。ピアノの音色がそれを機を糺せている。
第2楽章もベートーヴェンならでの試みが素晴らしい。2つの主題による変奏で、ケンプ、シェリング、フルニエが親しげに会話を楽しんでいるように思える。歌と味わいに満ちている。
第3楽章はスケルツォ。抒情性に富んだ主部ではシェリングの深々とした歌が聴きものである。それをケンプが引き立てている。フルニエも暖かみのある演奏で支える。
第4楽章も序奏付きとはいえ、3人がそれぞれ主張すべきはしても、和やかな会話を楽しみつつ、熱が入ってくると活気づいてくるような印象が強い。室内楽の醍醐味に溢れつつも味わい深い。深い歌心も素晴らしい。名人ならでの味わい深い演奏だろう。
ベートーヴェン生誕200年記念の全集とはいえ、250年記念でも十分存在価値ある演奏としても長く残るだろう。
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呉 信樹((Pf.) (金曜日, 16 4月 2021 21:49)
ベートーヴェンのピアノトリオは良い曲ばかりですね� 4番"街の歌"、5番"幽霊"、7番"大公"ばかりでなく、先程の6番やOp.1の3曲等、皆良い曲で好きです。�
畑山千恵子 (土曜日, 17 4月 2021 20:18)
そうですか。「大公」も出しますよ。
admin (木曜日, 21 4月 2022 05:48)
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