オランダ・バッハ協会、ジーベ・ヘンストラによるバッハ、イギリス組曲、第4番、BWV809。チェンバロによる歌心に満ちた演奏である。
前奏曲での協奏曲風の華やかさに続き、アルマンドでは重厚ながらじっくりとした歌心で聴かせる。クーラントはフランス風の軽快さ、優雅さの中にも歌が滲み出ている。サラバンドは内面から湧き出る歌が素晴らしい。メヌエットでは舞曲としての優雅さ、トリオの暗さとの対比も十分である。繰り返しの際、装飾音を自由に加えたりして、変奏していることには、バロック期の演奏習慣の再現も窺うことが可能だろう。ジーグの輝かしさにも歌心が活きている。
イギリス組曲はヴァイマール期の作品で、アルマンドークーラントーサラバンドージーグの定型を守りつつ、ブーレ、ガヴォット、メヌエット、パスピエをはさんでいく保守的な作風である。ケーテン期のフランス組曲になると、いくつかの舞曲をはさんでいく自由な作風となっていく。ライプツィッヒ期のパルティータになると、一層自由になり、古典組曲から近代組曲へと移行する。そこには、バロックから古典主義、ロマン主義への道も垣間見える。
ヘンストラの演奏は聴き込んでいくほどに味わい深い。これは得難い演奏だろう。
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admin (木曜日, 21 4月 2022 05:48)
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