エフゲニー・コロリオフ バッハ ゴールドベルク変奏曲 BWV988

 ロシアのピアニスト、エフゲニー・コロリオフが2008年のライプツィッヒ、バッハフェストでゴールドベルク変奏曲、BWV988を演奏したもの。

 主題、アリアの味わい深さ。第1変奏からバッハの世界に引きずり込まれてしまう。装飾音も自由、闊達に入れ、バッハならこう演奏しただろうと思わせてしまう。歌心も十分。後半のフランス序曲による変奏も見事で、バッハの音楽の深まりを感ずる。チェンバロを思わせる高音域を使った演奏も一聴の価値がある。バッハ演奏への一つの試みとして注目したい。古典組曲にも登場する舞曲様式にも反応、大きな世界を生み出す。カノンにも見事な対応を見せている。第25変奏の深みも聴きものである。

 この時期、ロシアと欧米との間は良好だった。今、ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアは欧米と敵対するようになり、音楽家たちの活動にも支障が出ている。ロシアと欧米が早い時期から、ロシアを含む全ヨーロッパ安全保障体制を構築することを考えていれば、ウクライナ侵攻があっただろうか。それを思うと、ロシアを含む全ヨーロッパ安全保障体制を構築すべきだったと感ずる。音楽家たちの往来も自由になっただろう。戦争と平和と音楽。重いものがある。