ルドルフ・ゼルキン、モーツァルト ピアノ協奏曲 第20番 K.466。ジョージ・セル、クリーヴランド管弦楽団との共演。
第1楽章、オペラ「魔笛」K.620、夜の女王のアリア「復讐は火のごとく」を思わせる。セルのオーケストラが見事に表現、ゼルキンの端正、かつ素晴らしいピアノが引き立つ。モーツァルトは、この協奏曲に交響曲的な深みを加え、オーケストラの比重を高め、単なる伴奏にしていない。これが、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームスへと引き継がれていく。カデンツァはベートーヴェンによる。
第2楽章。無骨に聴こえても、歌心に富んでいる。セルもゼルキンを支えつつ、歌心溢れるオーケストラをまとめ上げている。激しい中間部でも、モーツァルトの音楽を保っている。
第3楽章。激しいロンド主題をゼルキンは雄弁に弾きつつ、モーツァルトの音楽としての響きを大切にしている。セルもゼルキンに応え、全力で引き立てている。カデンツァでも音色に注意しつつ、音楽を盛り上げていく。コーダでの喜悦感が見事である。
ゼルキン、セルの貴重な遺産として、聴き継がれるだろう。
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