クラウディオ・アラウ、ベートーヴェン、ピアノソナタ 第23番 Op.57「熱情」 1970年、ベートーヴェン生誕200年記念、ボン、ベートーヴェンフェストでのリサイタル。1969年、ベートーヴェンの申し子と言うべきヴィルヘルム・バックハウスがこの世を去った。その穴を埋めるかのようなアラウの演奏には、気迫がこもっている。
第1楽章から、ベートーヴェンの音楽に引き込まれていく。すさまじさが素晴らしい。それでいて、これ見よがしでもない。第2楽章はどうだろう。無骨に聴こえても、歌心が満ちている。変奏ごとに気分が高揚しつつも、じっくり歌い上げていく。いくぶん変奏された主題の回想後、完全終始せず、第3楽章へなだれ込む。激しくとも、じっくり弾き進む。気迫は十分である。展開部の繰り返しについて、繰り返さずコーダへ移る演奏も目立つ。アラウは繰り返している。繰り返さず、コーダへ移って締めくくる方が感銘深いだろう。気迫十分のコーダ。名演である。
21世紀のドイツの大御所、ペーター・レーゼル、ゲルハルト・オピッツは、アラウの演奏を模範としていたという。オピッツの場合、ヴィルヘルム・ケンプに学んだだけに、なぜかと思う。音色を聴くと、ケンプ譲りの暖かさがある。レーゼル、オピッツのベート―ヴェンを聴くと、似たり寄ったりと言う感があっても、アラウを範としたことは何かあるような気がする。
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