ルドルフ・ブッフビンダー、モーツァルト ビアノ協奏曲 第22番 K.482。ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団との弾き振り。2012年のライヴ。
ブッフビンダーがヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団との弾き振りでモーツァルトのピアノ協奏曲を演奏するとは、オーケストラとの相性・信頼関係が厚いからだろう。最も、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、ヴィルヘルム・バックハウスとの信頼関係が厚かったことを思うと、ブッフビンダーの弾き振りが実現したことも肯ける。
第1楽章でのオーケストラの統率力は素晴らしい。ピアノがまろやか、かつ歌心に富み、モーツァルトの音楽の本質をとらえている。喜悦感たっぷりである。ベートーヴェンを思わせる力強さも兼ね合わせている。カデンツァも音楽の流れに乗り、聴きどころとなっている。第2楽章。オーケストラをたっぷり、表情豊かに歌わせている。ピアノの響きも透明感あるとはいえ、しっかり歌い上げている。巨匠の味だろう。オーケストラとの調和も見事である。演奏の彫りも深く、深い感度が残る。第3楽章。ピアノから始まるにせよ、ブッフビンダーはオーケストラへの目配りも忘れていない。しっかりまとめている。ピアノとオーケストラが一体化して、モーツァルトの音楽へ聴き手を誘う。中間部のメヌエットが素晴らしい。オーケストラの典雅な響き、ピアノの響きが調和して、歌心に満ちた演奏になっている。ロンド主部に戻ると、オーケストラにも目配りを利かせている。カデンツァの音楽の流れを活かしている。
ブッフビンダー、オーケストラ共々、楽しみつつ、私たちの許にモーツァルトの味わい深い音楽を伝えた名演として、語り継がれるだろう。
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