メナヘム・プレスラー、エマーソン弦楽四重奏団によるシューマン ピアノ五重奏曲 Op.44。ボザール・トリオを結成、2008年に解散後、ソリストとして活動が始まった。日本にもやって来て、リサイタルを開いた際、聴いている。その演奏には、90歳を超えたピアニストとは思えないほどの素晴らしさがあった。
シューマンの室内楽の傑作、ピアノ五重奏曲。ピアノと弦楽四重奏がシンフォニックに動き、調和している。エマーソン弦楽四重奏団もプレスラーのピアノと共に、シューマンの音楽の世界を作り出している。
第1楽章のきびきびした中にも、ロマンあふれる世界が広がっていく。歌心も深い。第2楽章の深さも見事である。プレスラーの若々しさも光る。弦の歌心も素晴らしい。ロマン溢れる世界である。第3楽章。主部の流れが聴きもの。第1トリオの歌心には、ロマンの香りがする。第2トリオの激しい流れは一気に駆け抜ける。第4楽章もロマン溢れる歌、流麗さが一体化している。
プレスラーは、1923年、ドイツ、マグデブルク生まれ、ユダヤ系だったため、ヒトラーが政権を握ると、アメリカに亡命した。ユダヤ系の音楽家たちは、ヒトラーが政権を握ると、続々亡命していった。シェーンベルク、ツェムリンスキー、フォス、ヴァルター、クレンペラー、スタインバーグ、セル、シュナーベル、ゼルキンなどがいる。プレスラーもその一人である。アメリカは、ナチスを逃れて亡命したユダヤ系音楽家たちのおかげで、一躍、音楽の先進国となった。その反対、ドイツ、オーストリアの音楽は衰退せざるを得なかった。しかし、ドイツ、オーストリアの音楽は、1989年、ベルリンの壁崩壊、1990年のドイツ再統一で、かつての勢いを取り戻しつつある。
もう一度、歴史を学び、ユダヤ人迫害・戦争について学ぶ時が来たようである。
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