アンドレアス・オッテンザマー ソル・ガべッタ デジャン・ラツィク ブラームス クラリネット三重奏曲 Op.114

 アンドレアス・オッテンザマー、ソル・ガベッタ、デジャン・ラツィクによるブラームス クラリネット三重奏曲 Op.114。スイス、バーゼル、オーバー・ライン音楽祭、2015年9月30日のライヴ。

 第1楽章。オッテンザマーが晩年のブラームスの心情を見事に描く。ガベッタの深いチェロの音色と歌、ラツィクが見事に全体を支えている。第2楽章。深々とした歌がクラリネットから流れていく。チェロも味わい深い歌を奏でていく。ピアノも深々とした音色で淡々と歌い上げる。ブラームスの孤独な心境が伝わっていく。第3楽章。スケルツォ。アンダンティーノ・グラツィオーソで、ここにもブラームスの孤独が現れている。ラツィクがしみじみと歌い、オッテンザマーもしみじみと歌う。第4楽章。激しい推進力。ラツィクが見事にまとめている。オッテンザマー、ガベッタもこれに応じている。

 親族、友人たちの訃報が伝わる中、ブラームスは、クラリネット奏者、ミヒャエル・ミュールフェルトと出会い、この作品をはじめ、クラリネット五重奏曲 Op.115、2つのクラリネット・ソナタ  Op.120(ヴィオラでも演奏される)を作曲した。ブラームスの悲しみ、諦念がにじみ出ている。人生の最後の時期を見つめながら、至高の境地に至っている。

ピアノ小品集、Op.116-Op.119も深い境地に立っている。それでも、1893年、イタリアへと旅立った時、ブラームスはもう2度とイタリアには足を運べないかもしれないと悟っただろうか。