チョ・ソンジン、ザビーネ・マイヤー、ソル・ガベッタによるベート―ヴェン ピアノ三重奏曲 Op.38。七重奏曲 Op.20をピアノ、クラリネット、チェロの三重奏曲として編曲したものである。2020年、ソルスベルク音楽祭でのライヴである。
ザビーネ・マイヤーは、1981年、カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との対立となった事件で名をはせたとはいえ、ここでは素晴らしい演奏を聴かせている。カラヤンは、マイヤーをベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の楽員として迎えたくても、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団側が納得しなかったことで、カラヤンとの間に溝ができ、8年後、カラヤンはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任を去った後、その3か月後に亡くなった。
それはさておき、マイヤーが素晴らしいソロを聴かせる一方、チョ・ソンジンも素晴らしい音色で盛り立て、ソル・ガベッタもしっかりと支えている。第1楽章の闊達さ、雄弁さが見事である。第2楽章の深い歌心が素晴らしい。第3楽章。メヌエット、後のピアノソナタ 第20番 Op.49-2、第2楽章のひな型になっている。歌心が調和して、味わい深い演奏である。第4楽章。主題と変奏。チョのピアノがユーモアたっぷりである。ピアノ中心とはいえ、ガベッタが見事に応じている。マイヤーも見事な味を添える。第5楽章。スケルツォ。ピアノ、クラリネット、チェロが一体化して、ユーモア溢れる音楽を繰り広げていく。トリオの伸びやかなチェロの歌が聴きものである。第6楽章。荘重な序奏、ピアノによるロンド主題から、クラリネット、チェロが加わって、大きな世界を作り上げる。チョのピアノが見事で、ピアノの音色が豊かで、美しい。ガベッタ、マイヤーをバックアップしながら、音楽を作り上げていく。
マイヤーの見事さ、ガベッタのどっしりした歌心、チョの見事なピアノ。それらが調和した、素晴らしいひと時を味わうことができた。
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