青柳いづみこ フランソワ・クープラン クラヴサン曲集 第13組曲

 フランス音楽研究家、ピアニスト、青柳いづみこによるフランソワ・クープラン クラヴサン曲集 第13組曲。安川加寿子が日本に伝えたフランスのピアノ奏法を広め、ドビュッシーを中心としたフランス音楽研究家として、ピアニストとして幅広い活動を行っている。

 フランス・バロック音楽でのクラヴサン作品における組曲は、キャラクター・ピースの傾向が強い。ドイツ・バロック音楽の組曲の傾向とは異なる。ドイツの場合、バッハの組曲を見ると、イギリス組曲はヴァイマール時代の作品で、アルマンドークーラントーサラバンドージーグの定型にブーレ、メヌエット、ガヴォット、パスピエを挟む形になっている。フランス組曲では、メヌエット、ガヴォット、ブーレ、ポロネーズ、エール、ルールを入れ、かなり自由になっている。パルティータではカプリツィオ、スケルツォ、ブルレスケ、ロンド、エール、パスピエ、メヌエットなどを加え、構成も自由になっている。

 フランス・バロック音楽のクラヴサン作品は、完全なキャラクター・ピースである。バッハがパルティータで自由な舞曲構成を取るようになったことには、フランス・バロックの影響が濃く現れている。キャラクター・ピースとしての組曲が、シューマンなどにも影響を与えた面もある。

 青柳の演奏を聴くと、フランスの香りが漂う名演となっている。ペダルも控えめにして、じっくり歌い上げ、典雅な香りが会場に広がり、聴き手に伝わっている。2023年4月8日、タカギクラヴィア松濤でのコンサート・ライヴ。小空間の方が、この種の作品には合っている。フランスの典雅な香りが会場を包んでいた。