レナード・バーンスタイン、ニューヨーク・フィルハーモニックとの弾き振りによるガーシュウィン ラプソディー・イン・ブルー。1976年、ニューヨークでのライヴである。バーンスタインはピアニストとしても定評があった。
1969年、ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を辞任後、ヨーロッパへの客演が増え、ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェン、シューマン、ブラームスの交響曲全集を出したり、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とは自作自演も残している。
ニューヨーク・フィルハーモニックとは息の合った演奏を聴かせている。ピアニストとしての素晴らしさには脱帽する。ヨーロッパで客演した場合、弾き振りの際、ヴィルヘルム・バックハウスからベーゼンドルファーを借りたこともあったという。
中間部の抒情的な部分の歌心は見事である。オーケストラの統率力も優れている。バーンスタインの親友、才人として評価の高いルーカス・フォスも見事なピアニストだった。もっとも、フォスの場合、日本での知名度はいま一つだった。1970年、日本フィルハーモニー交響楽団の招きで来日、1988年、サントリー音楽財団の招きでも来日した。フォスの場合、画家、コーネリア夫人とカナダの奇才ピアニスト、グレン・グールドとの恋愛関係で名前が出るようになったことが気の毒である。バーンスタイン晩年の自作自演、交響曲 第2番「不安の時代」では、フォスがピアノを担当している。
ガーシュウィンは、ジャズ・クラシックを融合した、真のアメリカ音楽を作曲しようとして、パリに行き、ラヴェル・ストラヴィンスキーに学ぼうとしたところ、殆ど相手にされなかった。真のアメリカ音楽の担い手になったのが、バーンスタインだった。ミュージカル「キャンディード」「ウェストサイド物語」をはじめ、オペラ「静かな場」、ユダヤ精神を伝えた交響曲 第1番「エレミア」、第3番「カディッシュ」など、注目すべき作品が少なくない。
バーンスタインの音楽は、多元主義(マルティズム)と言うべきだろう。折衷主義は的外れである。ジャズ・ポップスとクラシックを融合させた、アメリカ的な響きが感じられる。その意味でも、アメリカ音楽の本質を再考する必要があるだろう。
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